先日、サブカル好きな友人Nさんの頼みで郊外へ車を走らせていたら、昭和の遺産というべき「エロ本自販機」を発見した。
今みたいに簡単に性的媒体にアクセス出来ない頃に学生時代だった40代中年諸君にとっては非常にノスタルジーを禁じ得ないだろう。
当時はコンビニで度胸試しでエロ本を買う強者もいたが未成年者である事を理由に断られ、エロ本は買えない上に学校でエロ本購入者のレッテルを貼られるリスクを考えるとどうしてもそんな勇気はなかった。
小心者のくせに、開かれ始めた性の不思議さと理由無き突き上げるような性的衝動に翻弄され始めた僕にとってそれは必然であった。
エロ本自販機の構造はマジックミラーの様なもので日中は鏡のようだが、夜になると自販機内のライトが点いて商品が見えるようになる。
塾の帰りで帰宅が遅くなる頃、それは人目がつかない暗い路地にぽつりと意思を持たない淫靡な明かりを纏いながらその一角だけを形取っていた。
数メートル離れた位置に自転車を停め、周りに人がいないかを確かめると素早く駆けつけ、くしゃくしゃになった千円をそれに無理やり流し込んだ。
エロ本を吟味する時間も余裕もないし、裸の男女が交差していれば、何でもよかった。兎に角、早くこの無防備な状態を脱したい。焦る意識、両手の平の汗が凄い。この数秒が何時間にも感じる…
ウィーン…
ガッコン…
素早く取り出し口から本を抜き出して、表紙も見ずに学ランの中に押し込み小走りで自転車まで駆けた。
マジか!?
ミッション成功!
よくやった俺!やれば出来る子なんだよ!
その勇気をマジで褒めたい!
町一番の勇者じゃ!!
奇妙な自己肯定感が湧き上がる。いつもより自転車のペダルが軽い…
耳の奥で心臓の鼓動を聞きながら帰宅して、
驚いたのは裸の男と女が交差する本ではなく、
何故か真っ白になった学ランを見た時だった
その真っ白いものは懐かしくて幽かに甘い香りがした。
その時は分からなかったが、湿気で本同士が引っ付かないようにとエロ本にはたっぷりのシッカロールが振りかけてあったのだ。
そんな思い出をNさんと話していたら、その頃がなんか一番エロかったねぇって二人して郷愁に耽ってしまった。