Blind Melon

連休も最後の一日。休みのはずが休みすぎて休む事に疲れている。リズムよく生きる事がどれほど楽か。自動操縦。思考停止。平日は尊い

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有り余る時間で新しい季節を迎える準備をした。毛布を圧縮袋につめて真空パックにしたし、エアコンの埃を掃除機で吸って剥き出しのフィンに洗浄スプレーをかけ、扇風機を押入れから取り出した。日中は初夏を思わせるような陽気でうんざりしたけど、真夜中は肌寒くて目が覚める。薄くて頼りないタオルケットに身を潜めてみる。

 

実家の妹の部屋からBECKっていうバンドマンの漫画を全巻引っ張り出して来た。これ読むとバンドがしたくなるんだよね。数年ぶりに読んでどハマりして何も手につかない。(僕はこの状態を「漫画廃人」と命名している) コユキが天性のボーカルでオーディエンスを圧倒するシーンを見ていると僕は何故だか Blind Melon のシャノン・フーンの事を思い出した。僕が知りうる限りで最も神に愛された歌声の持ち主だった。

 

高校生の頃、モノクロのアートワークが印象的なnicoっていうアルバムをジャケ買いした。今みたいにYOUTUBEで音源が確認出来ない時代だったから知らない音は雑誌で確認したり、直感でCDを買うしかなかった。昼休みに教室でGreen Day を爆音で鳴らしてみんなで大暴れしてた僕にとって Blind Melon の音楽は取り分け異質だった。今、振り返ればグランジとサザンロックがクロスオーバーした稀有なサウンドだったけど当時の僕にはアメリカ南部の土着したような音楽は理解不能だった。ただ困惑した僕の鼓膜はシャノンのハイトーンで枯れた歌声を拒絶反応無しで受け入れることが出来た。それはまるでバーボンウィスキーをあおった後のチェイサーの様な瑞々しさだった。ただ彼の歌声は神様に愛されすぎた。1995年に彼はオーバドーズで他界している。享年28才。27クラブに入会するには1年遅い死だった。

 

必需品を買い出しに車を走らせる。BGMはBlind Melon の Soup 。なんてカッコいい音楽なんだろう。歳を重ねて嫌なことや責任だけが重苦しくなることが増えたけど、飲めなかったウィスキーが飲めるようになったり、理解できなかった小説や音楽が理解できるようになったりする嗜好の変化は長く生きてきた者への特権だったり神様からの慰めだったりするのかもしれない。